鉱物を含む碧玉
鉱物を含む碧玉
碧玉、ジャスパーのなかに別の鉱物を含むものがあります。
英語でいうと、さしずめ「インクルージョン・ジャスパー」とでもいえるでしょうか。
水晶も別の鉱物を含む(インクルージョン)ものがあるので、同じ珪酸を主成分とする碧玉にあっても別の鉱物を含むものがあって当然だとは思います。
ただ、碧玉は不透明なので他の鉱物を含んでいたとしても、確認するすべがありません (透明であれば、すぐに分かるのですが)。
ただひとつの例外は、別の鉱物が碧玉の表面に出てきている場合です。
こちらの石は、庄内川で見つけた碧玉です。
赤色と対比する黒色、そして半透明な白色が魅力的でお気に入りの一石です。
この石をよーくみると、写真の真ん中あたりに四角形の陥没があります。
この陥没の個所は光との角度によってキラッキラッと光を反射します。
まるでガラスが底に埋まっているかのようです。 なんだろうとずっと考えていたのですが分からずにいました。
ところがその謎を解くきっかけとなる別の碧玉と出合いました。
実はこちらの碧玉、茨木の海岸で見つかった赤い碧玉(レッドジャスパー)となります。 こちらの碧玉には四角形の陥没がこれでもかっ!てほどあります(笑)。
最初の庄内川のものと規模は違いますが、同じようにガラスが底にはまっているかのようにキラッキラッと光を反射します。 茨木と愛知、距離は離れていますが似たような性質を持つ碧玉があるのは興味深いところです。
四角い陥没がたくさんあるので、この四角い陥没の謎を解く手がかりがないかじっくりみていたらありました!
真ん中あたりにとても小さいですが、金色の四角い鉱物がはまっているのが分かりますでしょうか?
この鉱物は金色である点、磁石につかないことから、黄鉄鉱(パイライト)だと思います。
そしてもっと探していたら、黄鉄鉱(と思われる)が酸化分解されて褐鉄鉱になったような個所もありました:
黄鉄鉱は、風化などの原因で表面が酸化分解されて褐鉄鉱などに変化しやすい鉱物です。
これらのことから考えるに、四角い陥没の正体は、黄鉄鉱が埋まっていたものが風化して外れた跡だと考えられます。
では、底に埋まっているようなガラス質は???という点ですが、 これも四角い陥没をよくみていたら謎が解けました。
実は、キラッキラッと光を反射するのは四角い陥没の底だけではなく、側面も同じように反射することが分かりました。 つまり、キラッキラッと光を反射するのは、ガラス質の何かが底に埋まっているからではないと考えられます。
おそらくその原因は黄鉄鉱のおかげでその箇所が摩耗せず、碧玉が出来上がった時の状態を保持しているからだと考えました。
こちらの石は海で見つかったものですが、この状態になるまで寄せる波に幾度となく洗われてきたと想像できます。 その過程で黄鉄鉱が風化して外れた訳ですが、その過程の間、黄鉄鉱の底にあった陥没の底はダメージを受けていなかったはずです。
その意味では、この石が見つかるのがもっと遅ければ、こんなにも綺麗な四角形の陥没がいくつもある状態ではなかったかもしれません。 絶好のタイミングでこの石が見つけられたお陰でこの謎を解くことができた訳です。
一期一会、出合いに感謝です。
さて、鉱物を含む碧玉をもう一点紹介したいと思います。
こちらの石との出合いと現在の姿になるまでの過程にもいろいろあって、まさに出合いに感謝な話なのですが、その話はまた別の機会にでも。
こちらの石にはアメリカで出合ったものですが、銀色の粒々が表面にあるのが分かりますでしょうか?
その色と光を反射するところから金属鉱物のようです。
ただ興味深いのは黄鉄鉱のように金色ではなく、銀色である点です。
このように別の鉱物を含む碧玉は、例えば青森、津軽地方から産する紅砂金石(べにさきんせき)、黒砂金石(くらさきんせき)などもあるのですが、硫化分を含むと腐食しやすいのが難点です。 放っておくと粉をふいたりします。
こちらの石の場合は、白鉄鉱であれば黄鉄鉱と同じように硫黄を含むため腐食していくと思いますが、今のところ腐食している感はありません。
またこちらの石を研磨してくれた石友さんによると、硫化分を含む鉱物を研磨すると硫黄臭がするのに対し、こちらの石の研磨の際には硫黄臭がしなかったと仰っていました。
とすると、この銀色の鉱物の正体が何なのか気になるところですが、この謎はまだ解けません。
今後、じっくり観察しながら答えを見つけていきたいと思います。
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