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水石になる石(個人的な趣向)

水石になる石への趣向

水石とは石を鑑賞する日本の文化のひとつであり、日本全国津々浦々から産する石がその対象です。

有名どころでは北海道は旭川からほど近い神居古潭から産する神居古潭石がありますし、加茂川石、瀬田川石、佐知川石は水石における三大銘石とされます。

水石に好まれる石、つまり水石になる石、なりえる石は硬く緻密でそうそう変質しない石です。そのほとんどが硬い変成岩でホルンフェルスが代表的です。

さて、私はこの水石になる石がとても好きです。

ではその何がよいのか、についてですが、まず第一に非常に硬く緻密なこと。

よく水石となる石を賞する言葉として、叩けばチンッチンッと清音を発するといいますがこれは事実です。

爪で軽く弾いても分かりますし、川原でそういった石を踏むとその他の石を擦れ合う時に発する音が高く、まるで鉄の塊を踏んだのかと思うほどです。

もちろん全部の水石がこのように硬く、緻密な訳ではありませんが、私はそういった石を好んでいます。

ただ、このチンッチンッと清音を発する石が本当に硬いのか、というとその実よくわかりません。例えば硬度7の碧玉を叩いてもこのような音はしません。

チャートもしかりです。

ある時、川原を歩いていて非常に高音を発する何かに躓いたので何かと思ってよく見てみると、お茶碗のカケラ、つまり磁器だったことがあります。

そういった意味では、良質の粘土を焼き固めた磁器と、自然の粘土が変成作用で凝縮、焼き固められたホルンフェルスは似ているところがあるということでしょう。 事実、そういった石をハンマーでガツンッと叩くと、真っ二つに割れたりしますので。

ただそういった石を触った時に感じる硬さというのは、碧玉よりも硬いと感じます。 時に川原で碧玉が他の石とぶつかった個所が粘土のように削ぎ取られた跡を見かけたりしますが、それは硬度7の碧玉よりも硬い何かが川原にあったことを示しているように思えるのです。私はそれがホルンフェルスだったのではないかと思っています。

私が水石になる石が好きなもうひとつの理由は、変化すること。

おいおい、そうそう変質しない石が水石になるんじゃなかったのかと思うかもしれませんが、変質はしませんが、見た目が変わるのです。それは水石に養石という言葉がありますが、それに近いことです。

蒼黒や灰黒といった石を養石すると真黒石かと思うほど色が濃くなりますが、そういったことです。私の場合は石を触るのが好きなので、しょっちゅう手で触ったり時にワセリンを塗ったりしますが、そうすると本当に色が濃くなってきます。 川原から拾ってきた直ぐの石は、岩肌が他の石とぶつかったりして荒れているのですが、日々触ったりしているとそれが落ち着き、その石本来の色になるといいます。

水石では真黒石が最高といいますが、最初から黒い石だけがその対象ではなく、時間と手間暇を掛けて黒くなった蒼黒や灰黒石も含まれると考えています。

そういった変化を愉しむという意味でホルンフェルスは最高だと思います。 碧玉ではこういった変化は愉しめません。水晶でもしかりです。

水石になる石のもうひとつの魅力は岩肌です。

巣立ち、梨地、ジャグレに米点模様、ちりめん肌といったものもあります。各々触り心地が違いますし、そのテクスチャは美しいの一言に尽きます。 これも水晶の単結晶では愉しめません。

庄内川の梨地

庄内川の梨地

一時期パワーストーンという言葉がもてはやされ外国の石がたくさん輸入されましたが、私は日本にある水石になる石こそ、パワーストーンとして相応しい歴史や背景そして性質を持ち合わせているのではないかと思います。

まぁ、パワーストーンでなくてもいいので、ペーパーウェイトとして机の脇にそっと置いて時々撫でたりしてその変化を愉しみつつ、無機質なデスクに自然物をそっと添えてみるのも一興かと思います。私の場合、石がひとつあるだけで心がとても落ち着いてきます。

水石のペーパウェイト


 


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